チタン

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スカンジウム - チタン - バナジウム
Ti
Zi
250px
一般特性
名称, 記号, 番号 チタン, Ti, 22
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 4 (IVA), 4 , d
密度, 硬度 4507 kg·m−3, 6.0
単体の 銀白色
チタン
原子特性
原子量 47.867 u
原子半径 (計測値) 140 (176) pm
共有結合半径 136 pm
VDW半径 no data
電子配置 [Ar]3d2 4s2
電子殻 2, 8, 10, 2,
酸化数酸化物 4(両性酸化物
結晶構造 六方最密構造
物理特性
固体 (常磁性)
融点 1941 K
(1668 , 3034 °F)
沸点 3560 K
(3287 ℃, 5949 °F)
モル体積 10.64 × 10−3 m3·mol−1
気化熱 421 kJ·mol−1
融解熱 15.45 kJ·mol−1
蒸気圧 0.49 Pa (1941 K)
音の伝わる速さ 4140 m/s (293.15 K)
その他
クラーク数 0.46%
電気陰性度 1.54 (ポーリング
比熱容量 520 J·kg−1·K−1
導電率 2.34 × 106 m−1·Ω−1
熱伝導率 21.9 W·m−1·K−1
イオン化エネルギー 第1: 658.8kJ·mol−1
第2: 1309.8 kJ·mol−1
第3: 2652.5 kJ·mol−1
第4: 4174.6 kJ·mol−1
第5: 9581 kJ·mol−1
第6: 11533 kJ·mol-1
第7: 13590 kJ·mol-1
第8: 15250 kJ·mol-1
第9: 16440 kJ·mol-1
第10: 20833 kJ·mol-1
(比較的)安定同位体
同位体 NA 半減期 DM DE/MeV DP
44Ti {syn.} 63 ε
γ
0.268
0.07
44Sc
 
46Ti 8.0% 中性子24個で安定
47Ti 7.3% 中性子25個で安定
48Ti 73.8% 中性子26個で安定
49Ti 5.5% 中性子27個で安定
50Ti 5.4% 中性子28個で安定
注記がない限り国際単位系使用及び標準状態下。

チタンTitanium Titanium)は、原子番号22元素元素記号Tiチタン族元素の一つで、金属光沢を持つ遷移元素である。

地球を構成する地殻の成分として9番目に多い元素で、遷移元素としてはに次ぐ。ルチルチタン鉄鉱といった鉱物の中に多数含まれる。存在は豊富であるが、集積度がさほど高くないことや精製が難しいことから、金属として広く用いられるのが遅れた。チタンの性質は化学的、物理的にジルコニウムに近い。酸化物である二酸化チタンは非常に安定な化合物で、白色顔料として利用され、また光触媒としての性質を持つ。

特徴[編集]

チタンは酸化物が非常に安定で侵されにくく、表面が酸化物の皮膜によって保護される空気中では、プラチナ(白金)や金とほぼ同等の強い耐蝕性を持つ。室温では酸や食塩水(海水)などとは殆ど反応せず、少量の湿気があれば塩素系ガスとも反応しない。そのため、純チタンではやや接着性に劣るが、逆に表面の汚れやごみなどの付着物を容易に取り除ける。しかし、高温ではさまざまな元素と反応しやすい金属であり、このため鋳造や溶接には大掛かりな設備を必要とする。炭素や窒素とも反応してそれぞれ炭化物や窒化物を作り、これらは超硬合金としてしばしば利用される。

特に純度の高いチタンは無酸素の空間においての塑性に優れ、鋼鉄と似た色合いの銀灰色光沢を持つ。チタンは鋼鉄以上の強度を持つなど大変強い物質である一方、質量は鋼鉄の約45%と非常に軽く、アルミニウムと比較した場合、アルミニウムに比べ約60%程度質量の大きいものの、約2倍の強度を持つ。これらの特性の影響により、チタンは他の金属よりも金属疲労が起こりにくい。

性質[編集]

見た目は銀灰色の金属元素であり、比重は4.5。融点は摂氏1812度(1667度、1668度とも)、沸点は摂氏3285度(3287度とも)であり、遷移金属としては平均的な値である。常温常圧で安定な結晶として六方最密充填構造(HCP)を持つが、880゜C以上で体心立方構造(BCC) に転移する。純粋なものは耐食性が高く、展性、延性に富み、引張強度が大きい(硬くかつ軟らかく強い)。空気中では常温で酸化被膜を作り内部が保護される。フッ化水素酸には少し溶け、加熱下の塩酸に溶ける。150゜C以上でハロゲンと、700゜C以上で水素酸素窒素炭素と反応する。原子価は、3価または4価である。また、磁石をわずかに引きつけられるほどの弱い常磁性や極めて低い電気伝導性熱伝導性を持っている。

用途[編集]

金属チタンは強度、軽さ、耐食性、耐熱性を備え、様々な分野で活用されている。しかし、精錬や加工が難しく費用がかかるため、身近に広く用いられるには至っていない。化合物では二酸化チタンが白色顔料として広く用いられ、日常でも接する機会が多い。

金属素材[編集]

チタン、あるいはチタンのアルミニウムやマンガンモリブデンなどとの合金の持つ、強度、軽さ、並外れた耐蝕性、高温に耐えるといった性質から、戦闘機旅客機などの航空機分野、自動車潜水艦の耐圧殻、ロケットミサイル、スプーン・フォーク、中華鍋印鑑眼鏡のツル、時計のバンド、フライパン、ゴルフクラブ自転車のフレームなど多岐にわたって使用されるほか、鉄鋼合金との脱酸剤や、ステンレス鋼において炭素含有量を減少させる目的などにも使用される。加工性にはやや難がある。

金属チタンを用いた部品は高価なものとなってしまうため、その用途は、他に代用できない場合や、ひたすら高性能を求められる場合、趣味分野などに限られる。近年までは、超音速戦闘機のような特に限られた用途でしか用いられていなかった。超音速機は大気との摩擦熱が大きく、構造材にも耐熱性が求められるが、アルミニウム合金は耐熱性が小さく、スチールは重量が大きく、耐熱性に優れ軽量な素材の導入が急務であった。世界最初の実用超音速戦闘機であるF-100の生産においては、当時のアメリカのチタン生産量の80%以上を消費したと言われる。

絵具[編集]

チタンの約95%は二酸化チタンとして、主に白色顔料として絵具合成樹脂などに使用される。ちなみに、二酸化チタンで作られた絵具は赤外線の反射率が高いため、屋外での絵画の描写に向いているほか、セメントなどにも使用されることもある。また、光触媒としての性質を持ち、光を吸収して有機物を分解する。この性質によって、光のあたる場所では有機物による汚れが分解される為に白さが長く保たれるが、逆に、有機系の色素や合成樹脂を分解してしまうためにこれらと混ぜて利用する事を難しくしている。

[編集]

二酸化チタンは、紙に織り込むという方法でも使用される。チタンを織り込むことで、白く丈夫で透けない良質の紙を作ることが可能となる。一方で、僅かながら重くなる。広辞苑など、長期に亘って使用される分厚い書籍に利用されるようになっている。

その他[編集]

また、他にも以下の用途に使用されている。

  • 海水への耐蝕性から、海水の淡水化プラントにおける熱交換器での利用。
  • 骨と結合する性質をもち、優れた機械的性質、生体組織との親和性の高さを兼ね備えることによる、デンタルインプラント人工関節/人工骨といった整形外科分野での利用
  • イオン化しにくいために金属アレルギーを引き起こしにくく、ピアスなどの装身具の材料として利用される。
  • 健康器具を兼ねたネックレスなどのアクセサリーの材料として用いられることがある。
  • チタンジルコニウム合金の刃物として利用。この合金は軽量でさびにくく高強度である。
  • 形状記憶合金の材料としての利用。
  • ニオブなどとの合金による超伝導素材。
  • チタン酸バリウムあるいはチタン酸ストロンチウムは、その高誘電率により電子材料(積層セラミックコンデンサ)に用いられる。
  • チタン酸ストロンチウムは高屈折材料として人工宝石や光学材料に用いられる。
  • 四塩化チタンガラスの着色や、高湿度の空気中で発煙する性質を利用して煙幕空中文字へ利用される。
  • 二酸化チタンの皮膚を保護する性質から日焼け止め剤としての利用される。
  • 二酸化チタンは光触媒作用により有機物を分解するため、トイレの表面に利用される。

上記の他にも、触媒としての利用やビルバオ・グッゲンハイム美術館セリトス図書館などのような建築物にも使用されている。

歴史[編集]

チタンはイギリス1791年、聖職者のウィリアム・グレゴールによって発見された。彼は自分の教区内のメナカン谷で発見したので、メナカイト(menachite)と命名したが一般的には知れ渡らなかった。また、ほぼ同じ時期にはフランツ・ジョセフ・ミュラーによっても同様の物質が作られたが彼はそれをチタンであることを特定することができなかった。

1795年にはドイツマーチン・ハインリヒ・クラプロートによって鉱石(ルチルチタン鉄鉱のどちらかであるが、どちらかというのははっきりしていない)から独自に再発見され、ギリシア神話における地球最初の子であるティタンに因んで「チタン」と命名された。

しかしこの頃はまだチタンを単体として分離する手法が存在しなかった。

チタンの発見から100年以上経た1910年ニュージーランド出身でアメリカの化学者であるマシュー・A・ハンター[1]が、チタンを高純度(99.9%)で分離することに成功した。

1946年には、ルクセンブルクの工学者であるクロールがマグネシウムで還元する方法(クロール法。後述)を考え出し、さらに高純度のチタンを作り出すことに成功する。

1950年代から1960年代にかけての冷戦で、ソ連アメリカ軍がチタンを使用することを防ぐための戦術として世界中のチタン市場を買い占めることを試みたが失敗した。

また、当時発見されていたチタン鉱脈はほとんど東側諸国であったため、アメリカはチタンをソビエト連邦より調達していた。もちろん今なら何の壁もなく行えるが、冷戦時にはそんなことは不可能だったため、アメリカはニセの会社を設立し、そこを通じてアメリカへ密輸入していた[2]

チタンの生産[編集]

自然界には純粋なチタンの単体は殆ど存在せず、化合物として主に鉱石の中に含まれる。地殻の中に約0.6%存在し、火成岩やそこから得られた沈澱物の中に多く含まれ、地球上に広く分布している。チタンの鉱石鉱物には、チタン鉄鉱(イルメナイト、FeTiO3)やルチル(金紅石、TiO2)、板チタン石(TiO2)、灰チタン石(ペロブスカイト、CaTiO3)などが存在するが、特にチタン鉄鉱とルチルが経済的に重要な役割を持っている。チタンの主な採掘は、オーストラリア大陸スカンディナヴィア半島北アメリカ大陸などであり、1997年におけるチタンの世界のシェアは以下の順になっている。

アポロ17号が月面に到着した際に持ち出された岩石から12.1%のTiO2が検出されたほか、隕石の中からも検出されており、太陽M型小惑星にも存在すると考えられている。また、チタンは石炭植物人体にも含まれている。

クロール法[編集]

チタン鉄鉱やルチルなどの、鉄分を含む鉱石からチタンを精錬する方法は、まず炭素と熱して鉄を除いた後、さらに炭素と熱しながら塩素を通じて四塩化チタンTiCl4(沸点136℃)とし、蒸留して精製する。

TiO2+2C+2Cl2→TiCl4+2CO

これをアルゴン中約900℃でマグネシウムと反応させた後、塩化マグネシウムを真空分離して多孔質の金属チタンを得る。

TiCl4+2Mg→Ti+2MgCl2

こうして得られたチタンは多孔質であるため、スポンジチタンと呼ばれる。通常はこの状態で出荷される。 途中、真空分離された塩化マグネシウムは再び塩素とマグネシウムに分離され、再利用される。

これをクロール法と呼ぶ。

チタンは高温で炭化物や窒化物を作りやすいので、上述したような製法を適用する。したがって、金属チタンは精錬に費用がかかり高価になる。

新精錬法[編集]

しかし、大阪チタニウムテクノロジーズ東邦チタニウムは、2007年6月15日に新しいチタンの精錬方法を研究・開発中であることを明らかにした。新精錬法では、還元剤としてマグネシウムの代わりにカルシウムを使い、連続処理が可能になる。コストは3割程度圧縮できるとのこと。両社の広報担当者がロイターに述べた。2010年頃実用化される予定である。

チタンの化合物[編集]

同位体[編集]

チタンは5つの安定同位体を持つが、その中でも48Tiが最も多く地球上に存在する。

不安定同位体を含めたチタンの同位体は、39.99から57.966までの原子量を持つ。

チタン世界会議[編集]

関連項目[編集]

出典・注釈[編集]

  1. http://periodic.lanl.gov/elements/22.html
  2. ステルス戦闘機 スカンク・ワークスの秘密 ベン・R. リッチ (著)、増田 興司 (訳) 講談社 (1997/01) ISBN 4-062-08544-5

外部リンク[編集]

1 元素周期表 18
1 H 2 13 14 15 16 17 He
2 Li Be B C N O F Ne
3 Na Mg 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Al Si P S Cl Ar
4 K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr
5 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe
6 Cs Ba * Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn
7 Fr Ra ** Rf Db Sg Bh Hs Mt Ds Rg ...
* La Ce Pr Nd Pm Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu
** Ac Th Pa U Np Pu Am Cm Bk Cf Es Fm Md No Lr