卵かけご飯

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卵かけご飯(たまごかけごはん)は、生のを混ぜ、少量の醤油等で調味して作る飯料理である。主に、卵は鶏卵、飯は米飯を用いることが多い。

卵ぶっかけご飯」、「卵ご飯」、「卵かけかけご飯」、または単に「卵かけ」、「たまご飯」などとも呼ばれる。一般的に、関東では「卵かけご飯」、関西では「卵ご飯」と呼ぶ傾向がある。

なお、「卵」の字に「玉子」が当てられることもある。卵を生のまま用いること、主食の飯と混ぜて食べることなどから、日本特有の食文化とされる。

作り方[編集]

卵かけご飯の作り方は好みに応じて多様性がある。

準備[編集]

  • 生卵 - 1個
  • - 適量(熱い飯だと、卵がやや固まることがある。この固まりを好む人と嫌う人がいる。)
  • 醤油 - 少量 -近年では卵かけご飯専用の醤油がある-

代表的な作り方[編集]

  1. 小鉢などに割り入れた生卵をよく溶きほぐし、醤油で調味する。
  2. 飯を茶碗に盛り、箸で飯の上に適当な窪みを作る。
  3. 溶きほぐした卵を飯に作った窪みに流し込み、卵と飯とを混ぜ合わせる。

この作り方では、飯に醤油が直接染み込まず、卵白や黄身をしっかり混ぜることができる。カラザが気になる場合には、取り除くことも容易になる。

  • 飯を茶碗に盛り、箸で飯の上に適当な窪みを作る。そこへ卵を直接割り入れ、飯と共にかき混ぜた後、醤油で調味する。
  • 茶碗に卵を割り入れて溶きほぐし、醤油などで調味しておいてから、飯をよそう。
  • 茶碗に盛った飯を醤油で調味し、飯の上に作った窪みに直接卵を割り入れてほぐす。

飯と卵と醤油を、口の中で溶け合わせながら味わうことができる。

この料理は簡単な作り方であるものの、かき混ぜる際に飯の量が少なかったり、窪みが大きすぎたりすると卵とのバランスが崩れるなど、食感が変わることがある。

また、窪みを作る際に窪みをあまりに小さくしすぎると溢れることもある。更にかき混ぜる速さ・強さ・時間は好みに応じて異なり、白身を完全に切ったサラっとした状態から卵黄が割れているだけの状態まで幅広い。

温度も重要であって、食感と味に影響する。飯の温度が高く、卵も室温になっていれば、卵は半熟状態になる。したがって、粘性が増し、甘みが増す。逆に、飯と卵の温度が低いほど、粘性が下がる。炊きたての飯を使うと卵のタンパクが熱のために変性し半熟状態になりやすいので、これを嫌う人は、炊き上がった後炊飯器でしばらく保温され粗熱の取れた飯を使うか、飯を茶碗によそって窪みを作ってからある程度冷めるまで時間を置いたものを使うとよい。温度には、飯の量と卵の大きさも影響する。

生卵の白身と黄身を分離し、黄身のみを用いる作り方もある。白身の水っぽさがないため、濃厚な卵の風味が楽しめる。残った白身はそのまま飲むか、メレンゲにして食べる。白身には、コレステロールを抑える成分が含まれているとされているため、黄身と同時に摂取した方がよい。

調味には醤油のほか、めんつゆ(素麺つゆ)などを用いることもある。調味の詳細は、次項を参照のこと。

また、バターをまず飯に入れて溶かしてから、卵をいれてかき混ぜ、しょうゆで味付けするという食べ方もある。

食べ方[編集]

味つけは、一般的には醤油を用いることが多い。ただ、その調味についても、次のようにいくつかの方法があり、食べ方にも多様性がある。

  1. 醤油を適宜注ぎ足し、味加減を確認しながら食べる方法。
  2. 少々の塩加減の多寡は気にせずに、目分量で醤油を加えて食べる方法。
  3. 朝採りの卵が入手できた場合などは、まず調味せずに、一口食べて卵の香ばしい陽の匂いを楽しんだ後、醤油で調味して食べる。
  4. 好みに応じて、後述のトッピング調味料を用いる。
  5. また、卵の黄身だけを醤油に数分間漬けて載せて食べる方法もある。

ホテル旅館等で提供される典型的な和朝食には、片口(かたくち)と呼ばれる小鉢に、割っていない卵が入れられ、もしくは、既に卵が割り入れられて、供されることがある。この卵は、生卵のまま飲みこむか、または卵かけご飯に用いる。和朝食には卵の他に、飯と味噌汁漬け物、水産加工品(干物や乾燥海苔、もしくは海苔佃煮)、卵焼き、および納豆等が配膳されることが多い。そこで、卵と飯、納豆を合わせ、卵納豆飯として食べる場合もある。また最近は、生卵ではなく、白身が凝固した半熟卵や、黄身がやや固まり白身はやわらかい温泉卵が供される傾向もある。これは、一度火を通すことで生卵が苦手な人も食べやすくなり、洋朝食にも用いることができるため、また、供食側も扱いやすくなり、温泉卵という名前で温泉気分を出すこともできるため、広く用いられるようになった。

卵かけご飯は時間が経つと卵の水分を米粒が吸い込む為、食感が悪くなり、個人差はあるものの、大抵の人は食べにくく感じる。愛好家の多くは、飯に卵をかけてから3分、早くて1分以内、遅くても5分以内には平らげてしまうだろう。勢いよく、一気にすすりこむ食べ方が好まれるが、のどを詰まらせ易いため、個々人がちょうど良い速度を体得することが重要である。もちろん、ゆっくり食べても食感を気にしなければ何ら問題は無い。

日本の食文化の中での位置づけ[編集]

一般的に日本では、原材料を加工調理した食品を「料理」として位置づける傾向があるため、単に飯の上に卵をかけた卵かけご飯は「料理」ではないとする意見がある。例えば、納豆をかけただけの納豆飯を「料理」と呼ぶ人は少ない。その一方、生食の極致とも言えるシロウオの踊り食いは食材に何ら手を加えていないが、高級料理の逸品として食通に広く知られており、生魚を切っただけの刺身もまた、完成された日本料理として、世界的に認知されている(刺身については、高度な技巧を要する調理法との指摘もある)。料理研究家栗原はるみは、2004年に発刊した外国人向けの料理書『ジャパニーズ・クッキング』で、卵かけご飯を紹介している。このように、調理を施すか、複雑な調理方法を用いるか否かによる「料理」の定義は定かではない。

日本国内では、最も簡単で手早く食べることのできる料理品目の一つとして知られており、特に朝食メニューとして、多くの日本人が一度は口にしたことのある品目である。生卵を熱い飯に掛けて食べるという特性上鶏卵独特の生臭みが目立ち、好き嫌いの分かれる料理でもある。

日本人の一般的な食習慣では、起床から出勤・登校するまでの気忙しく限られた時間内にとる必要のある朝食は、三食の中で、最も質・量ともに軽い品目で済ませ、昼食は、健康を考えて調理された栄養バランスの優れた手作りの弁当、もしくはコンビニエンスストアや弁当屋で販売している弁当や、ファーストフード店で購入した食品(ジャンクフードとみるむきもある)を友人や会社の同僚・取引先と会食するなど、家族以外の人々と摂ることが多い。夕食は、一家団欒で家族全員がその日の出来事などを話し、朝食や昼食に比べて時間をかけて、多くの量を食べることが多い。

卵かけご飯が朝食時に摂られることが多い理由は、第一に短時間で食べ終わることができる点である。この理由は、飯に生卵を加えることで、炊いた米特有の弱い粘り気が減り、米粒一つ一つが分離して流動化し、流し込むように掻き込んで食べることができるためである。このため、たとえば前日の酒量がたたって、食欲不振で昼食までの間に必要とする量が摂れない気分の時でも、流し込むように食べることができ、多くの量を摂ることができる利点がある。味噌汁と惣菜の品数を「一汁一菜(いちじゅういっさい)」のように表現する一般的な日本食では、飯茶碗一膳の飯の量を消費する時間は、一般的な食事作法・習慣から考えると、惣菜としてのおかずを順々に一口ずつ食べて、全品を平らげながら食べ終わることから、飯茶碗一杯分の飯の消費は、食事時間とほぼ同じ傾向がある。

また、手軽さ、安さ、栄養などの面から、就職や進学等で一人暮らしをはじめる際に、好んで食べられる場合がある。現在では、コンビニエンスストア外食産業中食産業が盛んなため、往時ほどではないが、根強い人気を誇る。

近年、鶏卵の価格は1個10数円と安いため、昼の定食を食べる客には、サービスとして、生卵を無料で食べられるように置いている食堂も少なくない。卵を取る客は、ほとんど卵かけ飯として食べる(味噌汁に入れるなどの例外もある)。

歴史[編集]

鳥類が産む卵を食用とするようになった歴史は比較的新しく、卵かけご飯を食べるようになったのは明治時代である。

日本は周囲を大海に囲まれ山が多いという地理的条件から、全長が短く流れの速い川が多く、淀みなく流れ有毒な細菌が繁殖しにくい水に恵まれていた。このため、魚介類等の刺身を始めとして旬の山菜を生のままでも清潔に調理することができ、生食する料理が少なからず存在する。その一方、牛や馬などの大型哺乳類は、農耕の重要な労働力として家畜化され、食用にすることは少なかった。一部の哺乳類は山河の守り神や神仏の使いとして崇められていたことも有り、食用にする際は、長い耳を羽根に見立て味が鳥に類似していることから、鳥類の一種としてのウサギや、海に棲むを魚類として認識していたことから、山鯨としてのイノシシのような一部を除き、主に鳥類や魚介類を摂ってきた。

平安時代以降、卵は神仏に供えるものであり、食べると罰が当たるとされていた。一般的に鶏卵を食べるようになったのは、江戸時代とされる。近代に入った明治10年頃、日本初の従軍記者として活躍し、その後も数々の先駆的な業績を残した岸田吟香1833年 - 1905年)が卵かけご飯を食べた日本で初めての人物とされ、周囲に卵かけご飯を勧めた。

その後、生卵は第二次世界大戦後の食糧難の時期を経て、高度経済成長期に至る直前までは希少価値があり、病人食や虚弱体質の栄養補給として用いられることが多かった。一般庶民が卵を気兼ねなく口にするようになるのは、高度経済成長期以降である。

2005年8月24日には、卵かけご飯の唄「クルクルたま飯」がリリースされた。

卵の生食[編集]

現代の日本では卵は生食できる食品として広く認知されているが、米国英国中国をはじめ日本国外の殆どの国においては卵を生食する食習慣はなく、火を通した調理が一般的である。そのような文化圏で育った人にとっては、日本における生卵を用いる食習慣はカルチャーショックであり、ときにはゲテモノ食と映る可能性もある。アメリカ映画の『ロッキー』では主人公がボクシングトレーニングの後の栄養補給のため、複数個の生卵をビールジョッキで飲み干すシーンが印象に残るが、日本人とそれ以外ではそのシーンの受け止め方が異なる可能性がある。(演じたシルヴェスター・スタローンは、このシーン撮影にあたり追加の出演料を要求したと言われる。)また、香港映画少林サッカー』では、林子聡が演じる「軽功」がぼろ靴の上で潰れた生卵を吸うシーンが出てくるが、これもいじましさの演出であり、特異な食べ方として描かれている。

さらに、生卵はサルモネラ食中毒などを起こしやすく、衛生や伝染病感染の背景から生卵を安全に食べられる地域は限られている。このため海外の滞在先で入手した生卵を用いて自炊し、食あたりする日本人が少なくない。生で食べることを前提にしている日本では、鶏卵農家が抗生物質を含んだ飼料を与えたり、衛生管理全般が行き届いているといえるが、日本においてもサルモネラ食中毒は近年増加傾向にあり、一定の注意が必要である。

サルモネラ属菌は、主にニワトリの腸管におり、卵を産む際に卵の殻に付着することが多い。日本ではGPセンターで次亜塩素酸ナトリウムにより卵を殺菌処理している。生卵を食べる場合は、ひび割れた卵や割れた卵、割ってから2時間以上経過した卵は使用しないほうがよい。このような情報は厚生労働省や各地の保健所からインターネットを通じて広報されている。

米国国内の鶏卵業者は FDAWHO 等の加熱処理のガイドラインに従って生食を前提にした飼育をしておらず、割り入れた生卵は低温殺菌したもの・卵白と卵黄を分けたもの・各種栄養素を添加したもの等を牛乳パック様の容器に入れられて店頭に並ぶ。これらの多くは冷凍保存が可能である。また、殻付きでは低温殺菌して白身が半ば固まった卵がパック入りで販売されている。特に防疫に注力しているオーストラリアではオーストラリア国内に持ちこめない食品として卵や卵製品が検疫検査局の品目として挙げられている。一部の東南アジア諸国では卵の外部はもとより内部にも細菌の存在が確認されている。卵の輸入制限は各国の国内鶏卵業者への保護を目的とする他にも鶏卵が有する各種細菌がもつ食品衛生上の観点からも重視されており、各国で輸入規制対象物品に指定されていることが多い。日本の検疫では四類感染症まで輸入規制できるが、サルモネラ食中毒は四類感染症ではなく、他の事由が必要となる。

以上のような食習慣の違いにより、諸外国では多くの卵料理は存在するものの生卵そのものはあまり目にすることがなく、それを用いた卵かけご飯は日本独特の食習慣と食文化を背景にした食べ方と言える。

ちなみに諸外国から代表的な日本料理として知られるすき焼きでも、生卵が供される。

卵かけご飯と健康[編集]

栄養素[編集]

鶏卵にはコレステロールが多いと言われ敬遠気味にされる事が多く、過去に於いて高脂血症などの症状の患者の食事としては敬遠された事実がある。しかし、近年ではコレステロールの制限を行う高脂血症患者にも卵を勧める医師が多い。これは、高脂血症患者には太り気味の者が多く、これらを是正する為には、良質のタンパク質が必要とも言われているからである。

鶏卵に含まれる蛋白質の栄養価は理想的とされ、アミノ酸スコア(蛋白質栄養素としての価値を計る基準として、蛋白質を構成するアミノ酸のうち必須アミノ酸の組成により決定される)が最大値である100になっている。いっぽう、白米中に含まれる蛋白質はリシン、およびスレオニンの含量が低く、アミノ酸スコアも60とあまり良好とは言えないため、ここに卵を加えることでその栄養価を多少なりとも高める効果が期待できる。

主に、悪玉コレステロールの多いのは黄身部分であるが、反面、白身は其れを打ち消す善玉コレステロールが多いとも言われている。また、全蛋白質のうち65%程度が卵白中に含まれている。卵黄に含まれる蛋白質に比べ、卵白のそれは栄養素としての質はやや劣るものの、卵かけご飯における栄養面の改善効果は黄身のみを用いる方法よりも、全卵を用いる方が高いといえる。

以下の表に、卵かけご飯の各栄養価を示した。 卵食は太ると思われ気味であるが、明らかに間違いである。朝食において良質のタンパク質や炭水化物を摂取する事は、1日の生活に於いてエネルギーの燃焼効率が良いと言われ、間接的には規則正しい食生活にも繋がり体重の軽減に役立つと見られている。卵かけご飯はこれらの栄養価が含まれているため簡易な朝食としては優れた料理とも言える。しかしなお、いくつかの栄養素で著しい欠乏が認められるため、適宜、副菜の摂取、後述のトッピング、強化米を飯に加えるなどして栄養バランスを調整補完する必要がある。また、生卵白中のアビジンは、ビタミンB群ビオチンと強く結合する性質があり、ビオチンの吸収を阻害する。生卵の大量摂取でビオチン欠乏症を引き起こす可能性がある。

卵はM玉1個として60g。飯としては中学・高校生の学校給食における標準をもとに110gとして評価した。表の1日当たりとは卵かけご飯を三食食べた際の指標として掲げてある。
品目 エネルギー
[kcal]
蛋白質
[g]
脂肪
[g]
炭水化物
[g]
カルシウム
[mg]

[mg]
ビタミンA
[IU]
ビタミンB1
[mg]
ビタミンB2
[mg]
ビタミンC
[mg]
ビタミンD
[IU]
ナイアシン
[mg]
たまご 60g 90.6 7.38 6.18 0.18 30.6 1.08 270 0.036 0.258 0 72 0.06
白米 110g 162.8 3.85 0.55 33.99 2.2 0.11 0 0.033 0.011 0 0 0.33
1食当たり 253.4
13%
11.23
17%
6.73
 
34.17
 
32.8
5%
1.19
11%
270
15%
0.069
9%
0.269
24%
0
0%
72
48%
0.39
3%
1日当たり 760.2
38%
33.69
52%
20.19
 
102.51
 
98.4
16%
3.57
32%
810
45%
0.207
26%
0.807
73%
0
0%
216
144%
1.17
8%
日本人1日1人当たり栄養所要量 2,000 65 --- --- 600 11 1800 0.8 1.1 60 150 14

下表は諸外国の人々が日本人同様に卵かけご飯を食べた場合の栄養比較として、栄養情報基盤データベースシステムの統計値を元にして最も多く栄養所要量を摂取する世代を一覧化したものである。

国名(調査年)
年齢層
エネルギー
[kcal]
蛋白質
[g]
脂肪
[g]
カルシウム
[mg]

[mg]
レチノール
[μg]
ビタミンA
[IU]
ビタミンB1
[mg]
ビタミンB2
[mg]
ビタミンC
[mg]
ビタミンD
[IU]
ナイアシン
[mg]
イギリス(1991)
男(15 - 18歳)
2755 55.2 1000 11.3 700 1.1 40 - 18
日本(1994)
男(16 - 17歳)
2750 80 800 12 2000 1.1 1.5 50 100(μg) 18
アメリカ(1989)
男(15 - 18歳)
3000 59 1200 12 1000 60 10 20
スウェーデン(1980)
男(19 - 22歳)
2900

600 10

1.5 1.7 60 5(μg)
イタリア(1978)
男(20 - 39歳)
3000 64 83 600 10

1.2 1.6 45 2.5(μg)
カナダ(1975)
男(16 - 18歳)
3200 54
1000 14

1.6 2 30 2.5(μg)
ノルウェー(1980)
男(19 - 22歳)
2900

600 10

1.5 1.7 60 5(μg)
インド(1981年)
男(16 - 18歳)
2820 53.1
500 - 600 25 750
1.4 1.7 40 200 19
アルゼンチン(1976)
男(18 - 35歳)
3200 39
700 5 - 9
2500 1.3 1.9 30 100 21

アレルギー[編集]

一般によく知られているように、鶏卵は食物アレルギーの原因となる頻度が最も高い食品である。乳幼児によく見られるものの場合、主に卵白に含まれる蛋白質のうちのいくつかが強いアレルゲン活性を示すことが知られており、これらの活性は加熱によって多少軽減されることも知られている。卵を生のまま食べる形態となる卵かけご飯、特に栄養価として改善効果がより高いと思われる全卵を用いた卵かけご飯は鶏卵アレルギーを持つものにとって最も過酷な摂取条件となる。基本的に卵アレルギーは重篤な症状を示す傾向があり、この場合、卵かけご飯を食べることはできない。なお、鳥飼育歴のある女性を中心に、成人になってから鶏卵アレルギーを示すことが希にあるが、この場合、卵黄に含まれる蛋白質が主たる原因となっている。

実験的には、生の状態に近いアレルゲン活性を低減させた卵白が作られている。現在でも研究が進められている低アレルゲン性卵白の製造が可能になり、低アレルゲン化卵が実用化されれば、アレルギーの寛解を導く食品として卵かけご飯を利用するようになる可能性はあるかもしれない。

米も食物アレルギーの原因となる事が知られている食品の一つであり、アレルゲンはの部分に含まれている事がわかっている。程度にもよるが、米アレルギーの症状が軽い場合、無洗米あるいは低アレルゲンをうたった米ならば摂取可能な場合がある。

通常の醤油は、アレルギー源となる事で知られる大豆あるいは小麦を原料として使用しており、これらに対してアレルギーを起こす事がある。この場合、ゴマアワヒエあるいはキビといった雑穀を原料とした醤油を使う事で、アレルギー症状の発現を抑えられる場合がある。

食中毒[編集]

卵の生食はサルモネラ菌による食中毒のリスクを含む。 詳しくは厚生労働省の卵によるサルモネラ食中毒の発生防止についてに表示されているが、特に卵の生食においては - 卵はきれいでひび割れのない新鮮なものを購入する - 持ち帰った卵はすぐに冷蔵庫に入れる - 割れた卵やひびの入った卵は生食に使用しない - 生食する卵は食べる直前に殻を割る といった注意が必要である。 また、同文書には「食品工場等は、殻付き卵の輸送、配達及び貯蔵は、10℃以下で行うべきである。」との記述があるが、これは消費者側で全て確認することは出来ない。スーパーの特売など冷蔵されない状態で売られている卵を買うときや、野菜などと共に配達される卵を入手したときは、卵の状態について特に注意すべきだろう。

様々な卵かけご飯[編集]

卵かけご飯は飯と生卵のほのかな甘みと醤油の塩辛さとコクを味の基調としている。

日本国内で流通している米はジャポニカ種であり、長粒種のインディカ種やジャポニカ種とインディカ種の中間のジャバニカ種に比べて小粒で長さも短く短粒種米と呼ばれている。米専用の炊飯器で炊くとジャポニカ種特有の粘り気が現れ、澱粉のアルファ化度が高くなり淡い甘味がある。炊いた米には若干の粘り気があることに加えて温かくても冷めていても複数回噛んでいるうちに甘味が増す。

最近は、様々な薬味やトッピング、また醤油以外の調味料を使う場合があり、地産地消の地鶏などを扱う焼き鳥屋では通常は知らされていない裏メニューの品目に地卵や有精卵を用いた玉子かけ飯を加えている店がある。加えて醤油の代わりに焼き鳥のたれをかけたものもある。裏メニューに通じた常連は卵と飯をそれぞれ単品で注文し、客自らが好みの作り方と食べ方で好評を得ている。

その他、牛丼寿司のマグロユッケなどでも生卵と飯を使う。寿司の場合、通常軍艦巻でそのサイズに合わせるため鶏卵ではなく、うずらの卵を用いる。

地域的な食べ方であるが、大阪などの関西では、カレーライスのトッピングとして生卵を乗せることが少なくない。これは、大阪市にある自由軒の「名物カレー」(インデアンカレー)という、飯とカレールーを混ぜたものの上に、生卵をのせたものが原型で、カレーと飯が混ざっていない一般的なカレーライスにも波及したものである。文豪谷崎潤一郎の好物としても有名である。さらにウスターソースを加える場合も多い。このような食べ方の背景として卵かけご飯の存在があったことが指摘できる。

※修正(恐らく、大阪出身の作家・織田作之助の間違いかとおもわれるが、ひょっとしたら谷崎も好きだったのだろうか? ちなみに自由軒本店の壁には織田作之助の肖像画が飾られており、「オダサク好みのカレー」というキャッチフレーズが書かれている。また織田作之助の代表作『夫婦善哉』の中に自由軒が出てくるシーンがある。)

日本以外では、韓国の石焼きビビンバユッケなどによく似た形式を見る事が出来る。だがこれは、石焼きの器に白飯と味付けした具を載せそこに生卵を入れてかき混ぜてしまうため、実際は生卵を食べるとは言いがたい物でもある。

中国香港広東省広西チワン族自治区には煲仔飯(ボウチャイファン:ボウは「保」の下に「火」と書く)と呼ばれる野菜をトッピングする土鍋飯があり、このオプションの具として卵を追加できるシステムとなっているが、これも炊きあがり直前に生卵を載せるものの、食べる際には半熟以上に固まっているため、生卵を食べるとは言えない。ただし、この料理にかけられる、ごま油オイスターソース醤油をほぼ同量ずつ混ぜたたれは卵かけご飯に適用しても悪くない。

トッピング[編集]

卵かけご飯は総じてビタミン類が少ないため、栄養バランスを考慮すると浅漬け等の漬物類を多くとると良い。 また、納豆やとろろ芋等とともに食べる場合は十分咀嚼するよう留意する。

調味料[編集]

関連イベント[編集]

島根県雲南市において卵かけご飯の魅力を語り合うシンポジウム「《第1回》日本たまごかけ飯シンポジウム」が開かれた。これは卵かけ専用の醤油「おたまはん」を同市の第三セクター「吉田ふるさと村」が開発したことに起因するものである。

シンポジウムの内容は歴史や魅力について語り合うものであり、卵かけご飯にまつわる思い出や料理法が募集された。 その中で「卵かけご飯の日」が10月30日に制定された。

匿名掲示板にて東京から奈良まで生卵を運ぶスレッドが立ち話題をよんだ。 「奈良の友達が卵かけご飯を食べたがっている」という、普通にはくだらないと思われるスレッドにも拘らず一部が共感しこのプロジェクトに参加、掲示板閲覧者が日に日に増していった。 「卵を運ぶ」という行為はあくまで掲示板閲覧者がかって出ていったもので結果的に奈良まで到着すれば良いというものであり、到着地の行程内であればそこまでの距離の長短に関わらず卵を移動させるといったものであった。 このスレッドを立てた人物(>>1◆WwTkMAnEgg)はおろか、卵を受け取った人・これから運ぶ人すら全く面識が無い。また顔を合わせることも無い(受け取り方法には『ここに隠しとくから・・・』がほとんどだったため) にも拘らず、卵は掲示板閲覧者により東京都国立市を出発し、何人もの手に渡り無事に奈良県奈良市に到着した。

最終的にプロジェクトには参加しなかった閲覧者にも多くの共感をよび(実際にこのスレッドは11スレッドまで続いた)ゴール地に到着した時には、多くの「おめでとう」等の祝いの言葉が掲示板に書き込まれた。

関連資料・作品[編集]

  • 『食感のオノマトペ』(三省堂2004年
    独立行政法人の食品総合研究所の研究員である早川文代(1968年 - )が中学校1年生用の現代国語の教科書用に書き下ろした『食感のオノマトペ』の中で卵かけご飯を取り上げてオノマトペとは何か、世代間で用法や意味が異なること、日本語にはオノマトペが多く、食感を表現する言葉だけでも186語に及ぶことなどが記されている。文中では用法として女子高校生同士の会話が例として挙げられており、卵かけご飯の味わいのうち卵の黄身の「まったり感」を味わった後、炭酸飲料のコーラを飲むことで「シュワー」という爽快さが得られる情景を用いて擬声語(擬音語)・擬態語を解説している。
  • バカルディ(現・さまぁ~ず) 『バカルディライブ なまたまごかけ飯(ビデオ / DVD)』(1998年
    三村マサカズ扮する青年タケノウチは、港町に仕事で滞在している。地元の定食屋の娘・リョウちゃんに恋をし、最初は飯を毎回大盛りで注文することで彼女に顔を覚えてもらおうとするが、客はみんな大盛りを注文する漁師ばかりなので、うまくいかない。そこで、毎回、「なまたまごかけ飯」を注文することで、彼女に自分を印象づけようとする。そんなタケノウチの前に、騒々しい地元のタクシー運転手(大竹一樹)が現れ、タケノウチにいろいろな恋のアドバイスをするというストーリーを軸に展開する舞台コント

関連項目[編集]

外部リンク[編集]