性風俗

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性風俗(せいふうぞく)とは、風俗(民衆文化)の中でも性に関わる分野のことである。古代ギリシアローマを含む地中海世界や、オリエントインド東南アジア中国日本など、性に関する風俗は多様で洗練された文化が存在した。また南北アメリカや、アフリカにも固有の性風俗の文化が多数存在した。これらは古代のみではなく、中世、近世においてもなお華やかな様相を持っていた。

西欧キリスト教文化中世にあってすでに性風俗に対する抑圧的傾向が見られたが、この趨向は、近世から近代に至り益々抑圧の度合いを強めて行き、イギリス・ヴィクトリア朝時代の性道徳が代表するような、偽善的で抑圧的な文化制度が社会的に承認されるようになった。西欧文明が地球上の諸地域を技術と経済、軍事で支配し植民地化するに及んで、西欧文化の備えていた性に対する矛盾した抑圧制度がこれらの諸地域、いやグローバルな規模で規範的な道徳観として定着した。

20世紀中葉にいたり、諸地域は西欧のくびきを脱し独立するが、しかしその社会と文化は長らくの西欧の植民地政策によって伝統文化が断絶させられたものとなっていた。このため、西欧の勢力は見かけ上去ったが、その文化的な規範はなお地球上の諸地域で大きな影響を持っており、性の風俗の伝統的な各地域の個性や制度や自由さは喪失されたままである。性風俗は近代的な産業となり、巨大なセックス産業のネットワークが公然・非公然と世界各地に存在している。

これらは発展途上国の性の搾奪だけではなく、性的な抑圧観念とその社会制度、経済的な退廃を齎している。性及び性風俗と性の文化の権利や自由の運動は各地に存在するが、諸国の体制はこれを抑制する方向に動いている。性の文化と性風俗文化を、支配のための抑圧機構によって隠蔽する他方で、これを支配し、自由主義や人権に対する弾圧の方便としても利用している。

このような状況において、先進国発展途上国の区別なく、性の文化や性風俗は矮小化され、かつては社会にあって公然と承認されていた風習や文化が権力の名のもと抑制されている。日本においても、江戸時代に見られた庶民文化としての多彩な性風俗は明治維新を通じて徐々に抑圧され、西欧化の名の元で矮小化され隠蔽が行われた。民衆の持つ風俗、そして性風俗の大らかさと自由、多様性は否定されタブー化され、性風俗と呼ぶとき、風俗店とそこで働く女性従業員が念頭されるような矮小化が現状のものとなっている。性は遙かに大らかなものであり、性の風俗は多様で肯定されるべきものであるが、そのような認識が承認されない状況が現代日本には存在する。

近年、性について語るタブーが薄れてきたためか、風俗という語で性風俗のごく一部(いわゆる男性性的嗜好に関わる部分や性風俗業界に関わる部分)を指すこともあり、またそれ以上に性風俗という語がこの特定領域を指すことが多いが、決してそれだけではない。

性という非常にプライベート、あるいはタブーに関わる領域なため、歴史の表に直接に出ることはないが、水面下で脈々と続いているものである。

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