西口元

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西口 元(にしぐち はじめ)とは、灘高校出身で東大卒の伊藤忠商事社員である。FXで会社の金6億円を溶かした。

FXにハマった伊藤忠商事元社員、6億を着服。ハイリスク・ハイリターンの魔力[編集]

エリート商社マンはFX(外国為替証拠金)取引にのめり込み、会社の資金をとめどなく使い込んでいった-。

出向先のニュージーランドの会社から資金約6億円を着服したとして、警視庁捜査2課は2014年7月6日、業務上横領容疑で大手商社「伊藤忠商事」元社員、西口元(32)=大阪府守口市=を逮捕した。

元手の何倍もの外貨売買ができるというFX取引の損失がかさみ、穴埋めのためにわずか半年の間に約70回も着服を繰り返していた。ハイリスク・ハイリターンの投資話に安易にはまったワケとは…。

「為替相場が気になり…」昼夜問わずパソコンを凝視[編集]

ニュージーランドにある伊藤忠商事の関連会社「SPFL」では、昼夜を問わず、パソコンの画面と向き合う西口の姿がよく目撃されていた。休暇で海外の島に旅行に出かけたときもバカンスそっちのけで、画面上の数字の変動を凝視していたこともあった。西口は周囲に、「24時間、為替相場の数字が気になって仕方がない」とこぼしていた。彼の頭を支配していたのは、外貨を売買し、為替相場の変動などで利益を出すFX取引だった。

西口は関西の名門である灘中学灘高校から東大に進学。大学院まで進み、伊藤忠商事に入社していた。

平成22年8月からは、伊藤忠が3割を出資するSPFLに出向。ユーカリの植林や木材チップの製造・販売を手がける会社で、西口は預金の管理や出納などを1人で担当していた。

SPFL以外にも、下請けで伊藤忠が100%出資する木材チップ製造会社「SWEL」にも籍を置いていた西口。SWEL名義でSPFLあての請求書を偽造し、自分の口座に送金する手口で、平成25年8月~26年2月に計約6億円を着服したとされる。SPFLの口座の残高証明書も偽装するなどして発覚を免れていたという。

ところが、伊藤忠本社に4月に復帰する内示を受け、2月にある年度末の会計監査で不正が発覚するのを恐れ、上司に犯行を告白。伊藤忠が3月に懲戒解雇し、4月に警視庁捜査2課に告発した。捜査2課は7月6日、業務上横領容疑で西口を逮捕した。

捜査2課によると、西口は容疑を認め、着服した資金の使途について「大半をFX取引の損失穴埋めに充てていた」と供述したという。

400倍の「レバレッジ」で取引。「負のスパイラル」に[編集]

西口がハマったFX取引の魅力とは何か。最大の特徴は、担保となる「証拠金」を業者に払うことで、その額の10~20倍といった高額の取引ができる点だ。この倍率を「レバレッジ」と呼ぶ。

例えば、1ドル100円で手持ちの資金が100万円の場合、通常は1万ドルしか購入できないが、レバレッジが10倍だと10万ドルまで買える。1ドルが101円の円安になると、1万ドルなら1万円だけの利益だが、手元には10万ドルあることになるので、利益は10万円になる。逆に1円円高になると、10万円の損失となる具合だ。

レバレッジに制限がない時期もあったが、投資家を保護するため、金融庁がレバレッジの上限を段階的に設定し、平成23年8月からは最大25倍に規制された。

業界関係者によると、国内で規制が始まったのに合わせ、外国の業者との取引に流れた投資家が多かったという。海外に拠点を持つFX業者には規制が及ばず、100倍、200倍といったレバレッジで取引することができるためだ。

「損した分を、損した分野で取り返そうと負のスパイラルにはまる人が多い。レバレッジの魔力にとりつかれた人は高倍率の取引がやめられない」と、業界関係者は説明する。

捜査関係者によると、西口も豪州の業者を通じ、400倍のレバレッジで取引を繰り返していた。別の業界関係者は、西口の取引について「負け続けると一発逆転を狙って取引がやめられず、気付いたときにはとんでもない負債を抱えるという典型例だ」と話す。

「ワンオペ」で不正に。監査の不定期化、確認行為の徹底を[編集]

西口がそうだったように、経理などを1人で担う「ワンオペ」と呼ばれるポジションの人物が、会社のカネを着服するなど不正に手を染めるケースが後を絶たない。

警視庁捜査2課に2014年6月に詐欺容疑で逮捕された三菱製鋼元社員は、社員に貸与された業務用カードの管理を1人で任されていた立場を悪用し、約3億円を着服したとされる。

どうしたら不正を防ぐことができるのか。

危機管理コンサルタントの田中辰巳さん(61)は「ワンオペでは、チェックが働きにくい」と指摘。その上で、社員のモラル教育、監査の不定期化、コンファーム(確認行為)の3つの対策を提案する。

定期監査ではタイムスケジュールが分かるので、「今回はごまかして次の監査までに損失を取り戻そう」と考えるようになる。コンファームについては、本社側が銀行などに直接確認を取っていれば、残高証明書などの改竄がやりにくくなるという。

田中さんは「経営陣が社員から『俺たちに疑いの目を向けているのか』と思われるのを嫌う傾向がある」と、国内で対策が進まない背景を説明。「経営効率化のために人員削減を進める傾向があり、ワンオペの状況は変わらず、不正行為は増えていくのではないか」と危惧する。さらに、こう言って警鐘を鳴らす。

「内部犯行は、企業にとっては大きなリスクだ。監査法人によるチェックは年々厳しく、内部告発の恐れもある。内部統制ができず、被害弁済もできないとなると、株主代表訴訟を起こされる可能性も高い時代になったということを認識するべきだ」

関連項目[編集]